モラルサイエンス・コロキアム「総体性・体系性・公共性・合法性の組み合わせ―公共宗教を補助線に」を開催

 令和5年5月10日、モラルサイエンス研究推進プロジェクトによる「モラルサイエンス・コロキアム」を対面とオンラインにて開催、「総体性・体系性・公共性・合法性の組み合わせ――公共宗教を補助線に」をテーマに39名の参加がありました。

 基調報告者には津城寛文つしろひろふみ(筑波大学名誉教授)、コメンテーターには田島忠篤(道科研客員教授)にご登壇いただきました。

 開催にあたっては、司会の冬月律(道科研主任研究員、モラルサイエンス研究推進プロジェクトリーダー)より趣旨説明があり、重要な概念であると同時に漠然として多義的な概念で公共性をめぐる様々な議論を確認され、本コロキアムがモラロジーにおいて公共性をどのように捉えられるかという問題提起が示されました。

 津城講師は、ご専門の公共宗教やスピリチュアリズム、他界的宗教と社会的宗教の視点から、モラロジーが他の諸思想や諸実践とどのような位置関係にあるのかを検討するために、「総体性」「体系性」「公共性」「合法性」四つのパラメータを用いることで、モラロジーと他の思想や実践の特徴、異同を考えることができ、互いの配置が際立つと述べられました。また、総合人間学としてのモラロジーの布置を考えるためには、「総合」から「総体性」、「学」から「体系性」というパラメータが必要であると指摘されました。

 

 四つのパラメータに関する様々な理論研究を丁寧に説明された後、それらのパラメータが宗教に接点のある思想運動とどのような度合いでどのような組み合わせをとっているのかを旧統一教会、創価学会、大本教、日蓮主義の例を取り上げて論じられました。また、モラロジーについては、四つのパラメータとも高い度合いを目指しているように思えるが、現状としては、創始者の廣池千九郎と同様「未完のプロジェクト」の段階であるとしました。

 

 報告後の討論では、津城講師の報告に対して、コメンテーターがコメントと質問を投げかけました。また質疑応答では、フロアやオンラインからの参加者との活発な議論が行われました。今回のコロキアムでは、モラロジーと公共性(共通善・公共善)を理論的に再検討し、学問としてのモラロジーを評価し、実践上でのモラロジーを検討する上で貴重な視点が提示されたことを確認できました。

(文責:モラルサイエンス研究推進プロジェクトリーダー 冬月律)