三井三池炭鉱万田坑における朝鮮人戦時労働者の考察

 三井鉱山株式会社三池鉱業所万田労務事務所が1946年7月に作成した「労務者名簿」がある。ここには1941年から1945年までに万田坑で働いた朝鮮人の氏名などが詳細に記載されている。従来の研究では、朝鮮人の未払金のみを指摘して強制労働を証明する史料と紹介されていた。

 しかし、同史料には終戦解雇となった朝鮮人に退職金と慰労金を渡していたことが記載されていた。筆者が終戦解雇となった朝鮮人の未払金と比較すると、退職金と慰労金の金額の方が約3.5倍も多かったことが判明した。三井三池からもらう金額の方が大きかったから、朝鮮人は会社の残してあるお金を気にせずに早めに帰国したかったのではないかと考察できる。約20年間、このような重大な事実が隠蔽されていた。日本と韓国では戦時中の労働者問題で関係を悪化させているが、真の問題解決のためには史料を客観的に分析していかなければならない。

<文責:歴史研究プロジェクト 長谷 亮介>