オンライン道徳科学研究フォーラム「現代社会問題に対するモラロジーのアプローチ」を開催
令和4年12月3日、「現代社会問題に対するモラロジーのアプローチ」をテーマに、第2回オンライン道徳科学研究フォーラムを開催し、所員を含め、全国から72名が参加しました。
今回は、道徳科学研究所(以下、道科研)から、犬飼孝夫所長・教授、横田理宇研究員、宗像俊輔研究員、中山理客員教授が発表し、その後、質疑と討論を行いました。
はじめに中山教授より、「私たちの現代社会は、廣池博士が生きた時代とは異なるさまざまな社会問題を抱えているが、それらの問題に向き合う際に、モラロジーの視点からどのようにアプローチしていくのか、その可能性について検討したい」と趣旨説明がありました。
犬飼所長は「「ソロ社会」をどう生きるか」と題し、「ソロ社会」(単独世帯が大きな割合を占める社会)について論じるとともに、孤独に関する調査結果を分析し、日本のみならず他国でも単独世帯が増えており、21世紀は「孤独の世紀」であると論じました。そして「ソロ社会」化が進む現代日本では、「誰もがどこかで誰かとつながり、安心して暮らしていける社会」にしていく必要があると述べました。
横田研究員は「現代経営学と道経一体論の対話」と題して、2000年から始まったMDGs(ミレニアム開発目標)からSDGsへと移行していった経緯を踏まえ、「組織均衡理論」や「フリーマンの(企業の社会的責任)主張」などの企業倫理が、廣池博士の「三方よし」とどう関連するかについて論じるとともに、具体的な事例をもとに、経営学における意思決定の循環プロセスを紹介しながら、現代経営学と道経一体論の実践の関連について考察しました。
宗像研究員は「SDGsからみる日本の諸課題―「人間の尊重」という観点から―」と題し、SDGsの概念を整理し、そこからみた日本の諸課題をあげたうえで、SDGsとモラロジーが目的や方法の面で共有可能な点が多いのではないかと述べました。SDGsの本質である「尊厳」と、そのスローガンである「誰も取り残さない」は、モラロジーの文脈では「人間の尊重」と読み替えられる。SDGsは環境問題に重点が置かれがちだが、人間尊重の基本である人権について、より弱い立場にある人々の精神的、物資的救済のあり方についてしっかり取り組むべきではないか、と問題提起しました。
中山教授は「いじめ問題と向き合う」と題して、いじめ防止対策推進法、マスコミの報道の課題などを整理しながら、いじめ問題の現状を分析しました。そして、長年教鞭をとってきた自らの経験を交えながら、いじめ問題の本質的課題の解決のためには、人格の直接的感化を通した教育が重要であると述べました。また、児童・生徒のレジリエンス力を養うことや、教師側の対応として、問題解決型アプローチが必要であると述べました。
その後、横田研究員のコーディネートにより、4名の発表者間で、また参加者からの質問に答える形で、チャット機能を活用しながら議論を深めました。終了後には発表者と参加者(希望者)の懇談タイムを持つなど、充実したフォーラムになりました。
(文責:道科研研究員 アブドゥラシィティ アブドゥラティフ)