モラルサイエンス研究会 「道徳とAI」を開催(12/4)
令和6年12月4日(水)、モラルサイエンス研究推進プロジェクトによるモラルサイエンス研究会が開催されました。
最初に、当プロジェクトの冬月律が本年度の共通テーマの「道徳とAI」についての趣旨説明を行い、その後、濱田陽先生(帝京大学教授)「AI時空とAI的な死-倫理的錯綜の先へ」と、師茂樹先生(花園大学教授)「仏教倫理からみたAIの諸課題:AI衆生論を中心に」をテーマに研究報告が行われました。
報告では、すでに多様な現場で活用されているAIをめぐって度々問題が指摘されるAIにおける倫理・道徳的な課題について、哲学・宗教・社会学の観点から検討されました。
まず、濱田先生の報告では、「AI時空」の定義(広義と狭義)、人が主体的に関係性を築く「文化の時空」と近代以降のテクノロジーによって構築された「統一時空」について説明されました。また、それらの時空を内容・特質・性質・理解・目的の項目別にまとめた図表「時空の対照表」を提示した後、AI的な死の成立とその限界について、時空と死の対照表を用いながら、「文化の時空」による死の観念を「生なる死」、「統一時空」によるそれを「生物個体としての死」とし、「AI時空」がそれぞれに与える影響を考察され、結果として現れる新たな死の観念を「AI的な死」と述べられました(報告資料より引用)。
最後には、今後は新たな価値観の形成を促すであろう「AI的な死」(「AIの死」も論点に含まれる)と人間の倫理上での共存をめぐる研究が浮上する可能性を示唆されました。
次に、師先生の報告では、最初に「AIは衆生(生き物)とみなすことができるのか」といった問題提起をされ、最近の研究動向を取り上げながら、「AIは衆生か」という問いをめぐる議論を整理し、説明されました。とくに、AIと倫理を考えるうえで、非西洋的な伝統に基づいた視点の重要性が指摘されました。また、AI倫理においては、心や意識の有無が重要な問題となるとともに、その判定は、採用する理論やモデル(汎心論、意識の統合情報理論、意識の表象説、唯識思想のアーラヤ識=生命モデルなど)によっても結果が変わることを述べられました。(報告資料より引用)。
報告後の質疑応答では、フロアからたくさんの質問やコメントをいただき、とくに「文化」の捉え方や実証研究の可能性などに関して活発な意見交換が行われました。
(文責:モラルサイエンス研究推進プロジェクト・リーダー 冬月 律)