「道徳教育研究コロキアム」を開催
令和5年1月25日、道徳教育研究推進プロジェクトによる「道徳教育研究コロキアム」を対面とオンラインのハイブリッド形式にて開催しました。
「道徳教育と学校課題-不登校を中心として-」をテーマに50名の参加がありました。
基調報告者には、大久保俊輝(モラロジー道徳教育財団特任教授、麗澤大学特任教授)、指定討論者には、鍵山智子(学校教育センター、元千葉県子どもと親のサポートセンター長、元小学校校長)、長澤勇哉(学校教育センター、元小学校教諭)の方々にご登壇いただきました。
まずプロジェクトリーダーである江島顕一(道科研主任研究員、麗澤大学准教授)より、趣旨説明が行われ、不登校の定義や実態、各種の政策動向などが説明され、本コロキアムが不登校という学校課題の現状把握とそれに対する多様なアプローチの提示というねらいが述べられました。
大久保講師は、令和4年10月に出版された『わが子が「学校に行きたくない」と言ったら-不登校解決レシピ』(モラロジー道徳教育財団)の紹介をしつつ、教育行政で不登校支援の責任者の立場にありながら、実際にわが子3人が不登校になった経験を語りました。教育行政、保護者、教師の立場の経験から、不登校にどう向き合い、どう解決・改善を図るのかをそれぞれの視点から示しました。
鍵山講師は、保護者・家庭支援の立場から、不登校とは子どもに心のエネルギーが不足している状態であるという捉え方を示し、その改善にはまず「大人(社会)」の対応から見直し、他者との信頼関係の再構築が必要であることを述べました。そして保護者や大人が不登校と向き合うためには、聴く、見守る、待つ、繋がり続けることが重要であると述べました。
長澤講師は、元教師の立場から、不登校児童生徒への支援には3つの段階があるとし、①予防の段階、②混乱期の段階、③対応の段階と述べました。①では魅力的な学校づくりや学級内での所属感が、②では混乱期を察知する感性と組織力、そこから救済する具体的行動力が、③では不登校児童生徒の納得感を具現化する力、根本、本質を見極め一点突破する力が、それぞれ必要であると述べました。
討論では、大久保講師の著書や報告に対して、指定討論者がそれぞれ質問を投げかけました。また質疑応答では、フロアやオンラインからの質問を受け付け、それぞれの論者が応答しました。
小・中学校における長期欠席者のうち、不登校児童生徒数は244,940人(令和3年度)と過去最高の数値となっています。この重大な学校課題の改善・解決に対する前向きな向き合い方や取り組み方を共に探っていく「最初の試み」となるコロキアムとなりました。
(文責:道徳教育研究推進プロジェクトリーダー 江島顕一)