モラルサイエンス・コロキアムを開催
令和3年10月20日、モラルサイエンス研究推進プロジェクトによるモラルサイエンス・コロキアムをオンライン形式で開催。「近代社会教育の実践と実態」をテーマに、35名の参加者が集いました。
講師に、田所祐史氏(京都府立大学准教授/教育学、社会教育史)、藤本頼生氏(國學院大學准教授/近代神道史、宗教社会学)、小平美香氏(天祖神社宮司・学習院大学講師/日本思想史)、井上兼一氏(皇學館大学准教授/教育史学)を招きました。
田所氏は「日本における社会教育史」と題して、日本の社会教育史は、近代日本、教育、社会教育、歴史に分けて考える必要があると指摘し、近代日本における教育・社会教育を中心に論じました。また、日本社会教育史とは何かを探求する際の分析視角として「上から」「下から」の関係構造、時代区分と隣接領域における実践と実態についても問題提起を行いました。
藤本氏は「近代の社会教育事業と神社」と題して、近代の社会教育に関する諸問題について、明治初期・末期・大正期に分けて論じました。また、戦後についても神社と社会教育の関係性、とくに社会教育のなかで神社・神職の活躍の余地についても述べました。
小平氏は「近代の女性を対象にした社会教育―穂積歌子の慈善活動―」を題として、近代の女性教育に関して渋沢栄一の長女・穂積歌子の日記を事例に取り上げ、歌子の社会活動の内容のうち、慈善活動を分類と分析内容を中心に関連資料を交えながら紹介されました。また、こうした歌子の活動は女性教育に留まらず、国民教化との関わりからの可能性についても言及しました。
井上氏は「教科書のなかの社会事業にかかる教材を読む」を題として、近代の国定教科書(修身)における社会事業的教材を取り上げ、社会事業がいかにして教科書に教材として形成され、分類できるのかについて、実際の教科書の資料を提示しながら紹介されました。また、進学率が低い時代において影響の大きかった修身の意味と合わせて、教材からの抽出・選定における問題提起も行いました。
各講師の報告後の質疑応答では参加者から各講師に対する質問も多数あり、活発な議論が交わされました。
(文責:モラルサイエンス研究推進プロジェクトサブリーダー 冬月 律)