道徳科学研究フォーラムを開催

 令和2年1月25日、26日の両日、廣池千九郎記念講堂(千葉県柏市)において「新たな時代の道徳を共に創る」を共通テーマに道徳科学研究フォーラムを開催しました。2日間に渡り、152名が参加しました。

 

◆「研究の四領域」に基づく「新たな時代の道徳」を探求

 道徳科学研究センター(以下、研究センター)では、令和元年度の共通テーマ「新たな時代の道徳を共に創る」をめぐって、それぞれの専門分野から研究を進めてきました。
 また、今回のフォーラムでは、昨年度に研究センターで設定した座標軸の「研究の四領域」(図参照)を意識したプログラム<表1参照>で構成した、二本の講演、五本のシンポジウム、四本の個人発表が行われました。以下では、研究の四領域との関係に注目しながらフォーラムについて報告します。

 

【表1】 図.研究の四領域

 

 図で示したように「研究の四領域」は、まず縦軸に「(一般の)倫理・道徳研究←→モラロジー研究」を、横軸に「理論的研究←→実践的研究」を設定しています。
 道徳の研究は真理を追求する営みです。「モラロジー研究」は道徳の総合的な研究(学問)ですので、一般的な倫理・道徳研究と同様に開かれています。
 今回のフォーラムでは、そのような認識・理解に基づいて、廣池千九郎が独自に体系化し提示したモラロジー研究と、近年目まぐるしい変化を遂げている現代社会の倫理・道徳の研究とを接続させるための研究成果を、参加者とともに共有し、議論しました<表2>。

 

【表2】講演・個人発表・シンポジウム一覧

 

◆ フォーラムのありたい姿

 フォーラムアンケートの意見から、分科会(二日目)への関心の高さがうかがえました。分科会形式は、今回新たに導入されたもので、参加者がプログラムの中から関心のあるものを選択でき、研究者は参加者と近距離で活発な議論ができる、いわば双方向参加型をめざすものでした。ほかにも、今後の取り組みに関する要望や歴史、皇室、人工知能に関する発表を求める意見がありました。
 これらの意見を踏まえ、今後も研究者と参加者の継続した対話・協働が可能となるようなプログラムでフォーラムを開催することで、モラロジーにおける、道徳と人類の安心・平和・幸福の実現との関係がより科学的に解明されるものと信じています。

 

①基調講演1 先崎彰容講師(日本大学教授)「分断社会を、どう生きるか―公共性の作り方」

 

⑤基調講演2 所 功講師(道徳科学研究センター教授)「令和の御大礼から見る伝統文化の在り方」

 

 さらに、2日間で合計5つのシンポジウムを4つの会場を使用して開催し、4名の研究員が個人発表を行いました。

②シンポジウム1「進化と自然の視点からこれからの道徳を考える」

 

③シンポジウム3「新たな時代の道徳―分断する社会の統合のために」

 

④シンポジウム4 「モラロジー子育てサークル活動のこれから」

 

 詳細は、『モラロジー研究所所報』やHP上で、後日報告していきます。

 

1月25日 会場:廣池千九郎記念講堂
【講演1】
「分断社会を、どう生きるか――公共性のつくり方」
先崎 彰容(日本大学教授)

 

【シンポジウム1】
「進化と自然の視点からこれからの道徳を考える」
立木 教夫(客員教授)・宗 中正(教授)・竹中 信介(研究員)

 

1月26日 会場:柏生涯学習センター 研修館
【シンポジウム2】
「グローバル社会における企業の生き残りと道徳」
寺本 佳苗(麗澤大学准教授)・藤野 真也(麗澤大学助教)・横田里宇(研究員)

 

【シンポジウム3】
「新たな時代の道徳――分断する社会の統合のために」
川久保 剛(主任研究員)・山岡 鉄秀(研究員)・ジェイソン・モーガン(研究員)

 

【シンポジウム4】
「モラロジー子育てサークル活動のこれから」
髙橋 史朗(教授)・木下 城康(研究員)・家庭教育課・子育てサークルメンバー

 

【シンポジウム5】
「廣池千九郎思想マップ 中津~京都時代」
冬月 律(主任研究員)・江島 顕一(主任研究員)

 

【発表1】
「ケアとモラロジー」宮下 和大(主任研究員)

 

【発表2】
「人生100歳時代における高齢者の道徳的課題について」
小山 高正(客員教授)

 

【講演2】
「令和の御大礼から見る伝統文化の在り方」
所 功(教授)

 

【発表3】
「AI(人工知能)をめぐる倫理と道徳」
犬飼 孝夫(教授)

 

【発表4】
「AIに関する倫理的・道徳的課題」
大野 正英(教授)