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 家族をめぐる意識の変化について(その1)

【問 い】

 少子化、高齢化、未婚化など、家族をめぐってさまざまな変化が起きてきています。こうした現象の背後には家族に関する意識の変化があると考えられますが、そうした変化をどのように(とら)えればよいのでしょうか。


【答 え】

1.家族をめぐる三つの変化

 第二次世界大戦後、日本社会における家族のあり方は大きく変化してきましたが、次の三つの段階で捉えることができます。

@法制度面での変化(戦後)

 第二次世界大戦の敗戦により、日本の民法のうち家族に関する部分は大きく変化することになりました。親族法・相続法が全面的に改定され、「個人の尊厳」と「両性の平等」を原則とする新しい家族法体系が生まれました。具体的に言えば、戸主制度の廃止、長子による家督(かとく)相続から均等相続への変更、夫婦を基本とする戸籍制度などが挙げられます。

A実態面での変化(高度経済成長期)

 戦後の高度経済成長に伴い、地方から都市部への全国的な人口の移動が起きました。それにより、一家族あたりの人数が減少し、大家族から核家族へと中心的形態が変わりました。また産業構造の転換に伴ってサラリーマン世帯が増加したことにより、仕事の場と家庭が切り離され、専業主婦の割合は増加しました。

B意識面での変化(80年代以降)

 女性の社会進出が進むにつれて「男は仕事、女は家庭」という従来型の役割分担に対する意識が変化してきました。また、子どもを持つことや結婚をすることに対する意識も大きく変化しつつあります。こうした意識の変化が、少子化や未婚化・晩婚化という傾向の背後にあります。

2.国民生活白書にみる意識の変化

 平成13年度『国民生活白書』では、家族の問題に対する考察を行っていますが、それを参考にしながら家族に関する意識の変化について考えてみましょう。

@子どもを持つことについて

 現在、日本では出生率が著しく低下しています。合計特殊出生率(注)は、70年代前半までは2.0前後で推移していたのですが、それ以降急速に低下し、2002年には1.32にまでなっています。これは、世界的に見ても極端に低い水準であり、数年中に総人口の減少が始まることが予想されます。こうした少子化傾向の原因は、一つには未婚化・晩婚化の影響が、もう一つには、一夫婦あたりの子どもの数の減少があります。

 それでは、こうした傾向の背後には、どのような意識の変化があるのでしょうか。1997年の調査では、「子どもが欲しい理由」として若い世代ほど「子どもがかわいいから」という回答が多くなっています。逆に「人間として自然だから」「社会的に一人前になるから」という回答は、若い世代ほど少なくなっています。これらの結果を見ると、子どもを持つことが当たり前のことではなく、本人の選択に任されるものであるという意識に変わりつつあります。

 ただし、子どもを持つことを否定的に考えている人は現在でも少数です。理想とする子どもの数は2002年では2.56人で、25年前と比べてもそれほど違いありません。子ども一人当たりにかかる教育費その他の費用負担が重くなっていることで、理想の数の子どもが持てず、子どもの数を減らさざるをえないのが現実のようです。

A結婚について

 少子化の原因の一つとして、未婚化・晩婚化が挙げられています。未婚率は男女ともに上昇していますし、平均初婚年齢も高くなっています。その最大の理由として、結婚に対する意識の変化が挙げられます。「結婚しなくても満足のいく生活ができる」と考える人は、若年世代になるほど多くなっています。

 独身である理由についての質問では、「適当な相手に巡り会わない」に続いて、「自由や気楽さを失いたくない」「必要性を感じない」という回答がされています。「結婚をしないと決めたわけではないが、結婚によって自由が失われる部分もあるのだから、自分の気に入る相手が見つかるまでは無理に結婚をする必要は感じない」といったところでしょうか。

 女性の経済力の向上や、家事の省力化、コンビニエンス・ストアの普及などによって、独身者でも経済面や生活面で不便を感じなくてすむようになりました。必要に迫られて結婚をするのではなく、結婚が自分の生活を充実させていくための選択肢の一つとして考えられるようになっています。

B家族観について

 家族のあり方について、「長男には特別な役割がある」「離婚は極力避けるべきである」「女の幸福は結婚にある」などの伝統的な考え方を支持するかどうかで、二つのグループに類型化してみたところ、年齢が下がるにつれてこうした考え方を支持しないグループが増える傾向が現れています。また男女ともに40代付近で支持・不支持の比率が逆転しており、同一年代では女性の方が支持しない割合が高くなっています。これは、従来の家族のあり方に必ずしも固執しない人々が若年層に増えてきていること、世代間で家族観のギャップが生じていることを示しています。

3.新しい家族観の必要性

 以上述べてきたように、家族をめぐる意識は急速に変化しています。「結婚して子どもを持つ」という家族のあり方が自明のものではなく、自分のライフスタイルとして個人が選ぶものであるという意識が広がっています。

 こうした変化は、産業構造の変化や女性の社会進出といった社会の変化によるもので、ある程度必然的なものかもしれません。また、家族は個人を制約するものであると考え、家族を単位とした社会から個人を単位にした社会への変革をめざす動きも起きています。しかし、個人が自立する基盤としての家族の重要性はいささかも失われていないと考えます。特に子どもの教育、老親の扶養、安らぎの提供といった分野で、家族が果たすべき役割をもう一度見直そうという声が強くなっています。

 今家族にとって、そして日本社会にとって必要なことは、時代の変化の中であらためて家族に対して積極的な意味付けをしていくことではないでしょうか。次号では、この点について考えてみます。

(注)合計特殊出生率:一人の女性が一生のうちに産む子どもの数を示す。

(文責=モラロジー研究所道徳科学研究センター・大野正英


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