道徳科学研究センター長挨拶


道徳科学研究センター長・大野正英

センター長・大野正英

 道徳科学研究センターでは、昨年度から「利他性を考える」と統一テーマとして取り組んでまいりました。昨年度の研究センターゼミならびに研究発表会では、多くの研究員がそれぞれの専門領域の視点から利他性の問題に関する発表を行い、さまざまな学問領域において利他性ということが注目を集めている状況があらためて確認できました。

 私の専門である経済学においても、自己の利益を優先して考えるという人間像に基づく理論体系が中心になって研究が進められてきましたが、人間の活動の動機は必ずしも自己利益のみに基づくのではないことは現実を見れば明らかです。渋沢栄一、松下幸之助、そして稲盛和夫というそれぞれの時代を代表する経済人が、企業の利益に関して、社会や他者の利益を増進するために活動した結果として得られるものであるという考え方を説いていますが、それは経済における利他思想の象徴的な表れであると言えます。人間は生きる意味を求める存在であり、そのためには自分が他者から必要されているという意識や、他者とつながっているという感覚が必要となります。利他性はこうした人間存在の根源につながる要素だと考えられます。今後2年間、道徳科学研究センターとしてこの利他性の問題に取り組んでいき、その成果をまとめて発表する予定にしていますが、興味深い成果を得られるものと確信しています。


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