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 No.104 「淡水」について考える


2012年7月1日 Category : NEWS  現代の倫理道徳


「淡水」について考える [2012年7月]

毎年8月1日は1977年に国が定めた「水の日」です。また毎年3月22日は、
国連が1993年に定めた「世界水の日」となっています。

水は私たちの暮らしに欠かすことのできない物質です。そもそも私たちの身体
は、その大半が水なのです。新生児は体重の約80パーセントが水分です。体重
に占める水分の比率は年齢と共に低下し、成人は約60パーセントに、高齢者は
約50パーセントになります。まさに、水分の比率が高いほど「みずみずしい」
と言えるのです。

私たちは、他の動植物と共に、地球の大きな水循環の中で生きています。海や
湖沼、土壌や植生から蒸発した水分は雲となり、陸地や海に雨を降らせます。
陸地への降水は川となり、途中で田畑を潤し、地下水を涵養し、人々の暮らし
の中で利用され海に流れ出ます。こうした水循環に思いを馳せると、私たち人
間も、他の動植物と水を分かち合っている大自然の一部であることが実感でき
るでしょう。

さて、陸上で暮らす私たち人間や動植物にとって重要な水は、何といっても「淡
水」です。「水の惑星」と言われる地球には、どれくらいの淡水があるのでし
ょうか。

地球には約13億8,600万立方キロメートルの水があると言われています。です
が、その約97.5パーセントは塩水であり、淡水は約2.5パーセントしかありま
せん。淡水総量の約69.5パーセント(地球の総水量の約1.74パーセント)は北
極や南極などの氷や氷河、永久凍土なので利用できません。利用可能な地下水
は、淡水総量の約30.1パーセント(地球の総水量の約0.75パーセント)しかあ
りません。さらに、河川や湖沼をはじめ大気中や動植物に含まれている淡水は、
淡水総量の約0.4パーセントであり、これは地球の総水量の約0.01パーセント
です。

私たちの身近な場所で利用できる淡水は、地球の総水量の約0.01パーセントに
すぎないのです。日本の一般家庭のお風呂の浴槽には、平均200リットルの水
が入るそうですが、地球の総水量を、この200リットルの浴槽に入れた水に例えると、
0.01パーセントは20ミリリットルです。それはお料理用の「小さじ」
(5ミリリットル)4杯分にすぎません。私たち人類は、この「小さじ」4杯
分ほどの淡水を分かち合いながら生活しているのです。

このように、「水の惑星」たる地球の淡水資源は、極めて限られています。し
かもそれは、多い地域と少ない地域があり偏在しているのです。現在、水資源
として理論上人間が最大限利用可能な淡水量の世界平均は、一人当たり年間
7,914立方メートルです。(ちなみに日本は世界平均より少なく一人当たり年
間3,398立方メートルです。)この量が、一人当たり年間1,700立方メートル
以下だと「水ストレス下にある」状態とされ、1,000立方メートル以下だと「水
不足」の状態、500立方メートル以下だと「絶対的な水不足」の状態とされて
います。

国連開発計画(UNDP)が2006年に公表した報告書によれば、今日、43か国
の約7億人が水ストレス下にあります。その数は2025年までに30億人を超え、
中東と北アフリカでは「水不足」の状態で生活する人々の割合が90%を超える
と予測されています。国連は世界の人口が2050年までに93億人となり、
2100年には101億人に達するという予測も立てています。人口が増え続けれ
ば、食糧生産のための淡水の需要も増えることでしょう。

今日、この貴重な淡水資源を、生態系に配慮しつつ万人が公平公正に利用でき
るようにするための、国際的な協力体制の構築が求められています。水に関す
る優れた技術と、稲作漁撈文明の中で水と親しみ、水を分かち合う文化を培っ
てきた日本は、世界の淡水問題の解決に向けて積極的に貢献していく文明史的
な使命と負っていると言えるのではないでしょうか。

【参考文献】アシット・K・ビスワス著、犬飼孝夫訳「第4章 水の世界よ、どこ
へ行く」(59〜77ページ)、ジャル・マルガ著、犬飼孝夫訳「第6章 二十一
世紀の危機とは」(89〜96ページ)。いずれもジェローム・バンデ編、服部英
二・立木教夫監訳『地球との和解:人類と地球にはどんな未来があるのか』麗
澤大学出版会(2009年12月)所収。

(文責・道徳科学研究センター研究員:犬飼孝夫)




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